JR各社で輸送密度2,000人/日未満の線区はどれくらいあるか
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JR の路線の中で、利用の少ない線区がどれくらいあるのかは、存廃や地域との協議の話題でたびたび取り上げられます。目安としてよく使われるのが、輸送密度 2,000 人/日という数字です。輸送密度は、路線の 1 km ごとに 1 日あたり平均何人の乗客が通ったかを表す値です。
旧国鉄の時代、国鉄再建特措法にもとづいて、輸送密度 4,000 人/日未満の路線のうち一定の条件に当たらないものが、バスなどへの転換が適当な「特定地方交通線」に選ばれました。国土交通省の検討会の提言(2022 年 7 月)によると、JR 各社は、輸送密度が 2,000 人(この 4,000 人の 2 分の 1)を下回ると、鉄道事業者の経営努力だけでは便利で持続できる鉄道サービスを保つのが難しくなる、という考えを示してきました。
JR 東日本・JR 西日本・JR 九州は、輸送密度 2,000 人/日未満の線区について、線区ごとの収支を公表しています(JR 北海道と JR 四国は全線区の収支を公表しています)。
この記事では、JR 旅客会社が公表している 2023 年度の線区・区間別の輸送密度を使って、2,000 人/日未満の線区・区間が会社ごとにどれくらいあるかを数えました。
会社ごとの件数と営業キロ
| 会社 | 公表している線区・区間 | 2,000人/日未満 | うち1,000人/日未満 | 2,000人/日未満の営業キロ | 会社全体の旅客営業キロ | 割合(営業キロ) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| JR北海道 | 23 | 13 | 10 | 1,284.8 | 2,336.6 | 55.0% |
| JR東日本 | 199 | 69 | 49 | 2,313.5 | 7,302.2 | 31.7% |
| JR西日本 | 112 | 30 | 26 | 1,353.1 | 4,897.5 | 27.6% |
| JR四国 | 20 | 6 | 5 | 209.1 | 853.7 | 24.5% |
| JR九州 | 59 | 19 | 14 | 634.5 | 2,342.6 | 27.1% |
| 合計 | 413 | 137 | 104 | 5,795.0 | 17,732.6 | 32.7% |
5 社が公表している 413 の線区・区間のうち、輸送密度 2,000 人/日未満は 137 件、1,000 人/日未満に限っても 104 件ありました。2,000 人/日未満の線区・区間の営業キロを合わせると 5,795.0 km で、5 社の旅客営業キロの合計(17,732.6 km)の 32.7% にあたります。
なお、JR東海については、線区別の輸送密度を公表した資料を、筆者が探した範囲では見つけられませんでした。そのため、この集計に含めていません。
割合で比べる
件数は、路線の多い JR 東日本がいちばん多くなります(69 件)。しかし会社の規模が違うので、路線全体に占める割合で比べたほうが実態に近くなります。
割合がいちばん高いのは JR 北海道で、旅客営業キロの 55.0% が 2,000 人/日未満の線区・区間です。JR 東日本(31.7%)、JR 西日本(27.6%)、JR 九州(27.1%)、JR 四国(24.5%)と続きます。
JR 北海道の割合が高いのは、路線網が広い地域に広がっている一方で、札幌の周辺を除くと沿線の人口が少ないためと考えられます。JR 四国の割合が意外に低く見えるのは、公表されている線区・区間の数が少なく(20 件)、利用の少ない部分が長い線区の一部としてまとめて計上されていることが影響している可能性があります。
集計の方法と注意
- 数えた単位: 各社が区間に分けて公表している線は区間を、分けていない線は線全体を 1 件として数えました。同じ距離でも、細かく区間に分けて公表している会社ほど件数が多くなります。件数だけで会社を比べないよう注意してください。
- 代行輸送の区間: 2023 年度にバスなどで代行輸送をしていた区間(津軽線 中小国~三厩、米坂線 今泉~小国・小国~坂町、陸羽西線 新庄~余目、根室線 富良野~新得、美祢線 厚狭~長門市、山陰線 長門市~小串)は、列車の利用として比べられないため、件数と営業キロから除きました(Rail Density Explorer の順位と同じ扱いです)。これらはどれも輸送密度 2,000 人/日未満の区間です。
- 営業キロ: 2,000 人/日未満の線区・区間の営業キロは、各社の公表値です。営業キロが公表されていない区間(上越線(越後湯沢~ガーラ湯沢))は 0 km として合計しました。
- 会社全体の営業キロ: 国土交通省「鉄道統計年報」の年度末の旅客営業キロで、新幹線を含みます(たとえば JR 東海の値 1,970.8 km は、同社が公表している東海道新幹線 552.6 km と在来線 1,418.2 km の合計と一致します)。分母に新幹線を含むため、在来線だけで比べると割合はもっと高くなります。
- 年度: 輸送密度は 2023 年度(令和 5 年度)の値です。新型コロナウイルス感染症の流行の前とは利用の水準が違う線区があります。
2,000 人/日未満の線区は「赤字の線区」なのか
輸送密度が低い線区の多くは、運賃収入で列車の運行や線路の維持にかかる費用をまかなえていないと考えられます。ただし、輸送密度だけで収支は決まりません。特急が走る線区は運賃・料金の単価が高く、貨物列車が走る線区では線路の使用料が入ります。一方で、橋やトンネルの多い線区は、利用が少なくても維持の費用がかさみます。
JR 各社の線区ごとの収支(営業係数)が公表されている線区は、Rail Density Explorer の各線区のページで見られます。輸送密度と合わせて見ると、「乗客は少ないが費用も小さい線区」と「乗客のわりに費用がかかる線区」の違いが分かります。
自分で確かめるには
Rail Density Explorer の地図で「輸送密度」の色分けを選ぶと、2,000 人/日未満の線区・区間がどこに集まっているかを全国の地図で確かめられます。会社ごとの一覧は、各社の事業者ページ(例: 北海道旅客鉄道)にあります。
出典
- 国土交通省 鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」(令和4年7月)
- 東海旅客鉄道「ファクトシート 2025」(営業キロ)
- 国土交通省 鉄道局「鉄道統計年報」(2023年度、各社の旅客営業キロ)
- Rail Density Explorer「データについて」(集計と加工の方法)
- 九州旅客鉄道の線区別の輸送密度の公表資料
- 北海道旅客鉄道の線区別の輸送密度の公表資料
- 四国旅客鉄道の線区別の輸送密度の公表資料
- 東日本旅客鉄道の線区別の輸送密度の公表資料
- 西日本旅客鉄道の線区別の輸送密度の公表資料
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