スマホとフルサイズ、同じ画角・同じ F 値で背景はどれだけぼけるか

カメラのレンズに書かれた「F1.8」は、スマートフォンのカメラの仕様にもよく出てきます。では、同じ F1.8 なら、スマートフォンでもカメラと同じように背景がぼけるのでしょうか。

答えは「ぼけない」です。この記事では、それがどのくらいの差なのかを、FOV Studio と同じ計算で数字にしてみます。

比べる条件

  • 2 m 先に立っている人にピントを合わせて撮る。
  • 背景は、人の 3 m 後ろ(カメラから 5 m)の壁と、ずっと遠くの景色(無限遠)の 2 つ。
  • 写る範囲(画角)は、すべてのカメラで同じにする。35mm判換算の焦点距離で、人物を撮るときによく使う 50mm(スマートフォンでは「2 倍」前後のズーム)と、スマートフォンの標準の「1 倍」に多い 24mm の 2 つ。
  • F 値はすべて F1.8。

センサーの大きさは、FOV Studio のセンサー一覧の値を使いました。1/1.3型(対角線の長さがフルサイズの約 3.6 分の 1)は、ハイエンドのスマートフォンの主カメラに多い大きさです。

ボケの大きさは、センサーの上での円の直径(mm)では大きさの違うセンサーどうしを比べられないので、横 4,000 画素の写真に直したときに何画素の円になるかで表しました。数字が大きいほど、背景が大きくぼけます。

換算 50mm(人物を撮るとき)

35mm判換算 50mm・F1.8・2 m 先の人にピントを合わせたとき(ボケは横 4,000 画素の写真での直径)
センサー大きさ実際の焦点距離背景(5 m)のボケ背景(無限遠)のボケピントが合って見える範囲(被写界深度)フルサイズ換算の F 値
1/2.3型6.17×4.55mm8.9mm9 画素14 画素1.62〜2.61 mF10.0
1/1.3型9.6×7.2mm13.9mm13 画素22 画素1.74〜2.35 mF6.4
1型13.2×8.8mm18.3mm17 画素29 画素1.80〜2.25 mF5.0
マイクロフォーサーズ17.3×13mm25.0mm24 画素41 画素1.85〜2.18 mF3.5
APS-C23.5×15.6mm32.6mm31 画素51 画素1.88〜2.13 mF2.8
フルサイズ36×24mm50.0mm47 画素79 画素1.92〜2.08 mF1.8

同じ F1.8 でも、遠くの背景のボケは、フルサイズの 79 画素に対して、1/1.3型では 22 画素です。フルサイズのほうが 約 3.5 倍大きくぼけます。

ピントが合って見える範囲(被写界深度)も、フルサイズでは前後合わせて 0.16 m ほどしかないのに対し、1/1.3型では 0.61 m あります。スマートフォンでは人の顔から肩、背景の手前まで、広い範囲にピントが合って見えます。

換算 24mm(スマホの「1 倍」)

35mm判換算 24mm・F1.8・2 m 先の人にピントを合わせたとき(ボケは横 4,000 画素の写真での直径)
センサー大きさ実際の焦点距離背景(5 m)のボケ背景(無限遠)のボケピントが合って見える範囲(被写界深度)フルサイズ換算の F 値
1/2.3型6.17×4.55mm4.3mm2 画素3 画素0.99 m〜無限遠F9.9
1/1.3型9.6×7.2mm6.7mm3 画素5 画素1.21〜5.68 mF6.3
1型13.2×8.8mm8.8mm4 画素7 画素1.34〜3.92 mF4.9
マイクロフォーサーズ17.3×13mm12.0mm6 画素9 画素1.47〜3.12 mF3.5
APS-C23.5×15.6mm15.6mm7 画素12 画素1.57〜2.76 mF2.8
フルサイズ36×24mm24.0mm11 画素18 画素1.70〜2.43 mF1.8

広角の 24mm になると、差はもっとはっきりします。1/1.3型の遠くの背景のボケは 5 画素で、写真を等倍で拡大しないと分からない程度です。フルサイズでも 18 画素で、50mm のときの 4 分の 1 ほどです。

1/2.3型では、2 m 先にピントを合わせると、表のとおり手前から無限遠までピントが合って見えます。このため、小さなセンサーのカメラは、ピントを合わせ直さなくても全体がくっきり写ります。

「フルサイズの F 何相当か」

表のいちばん右の列は、フルサイズのカメラで同じ画角・同じ距離から撮ったとき、同じ大きさのボケになる F 値です。

換算 50mm の場合、1/1.3型の F1.8 は、フルサイズの F6.4 と同じ大きさのボケになります。1/2.3型なら F10.0 相当です。この値は、ほぼ「F 値 × クロップ係数」になっています(1/1.3型のクロップ係数は約 3.6)。

これは、同じ画角にするために、センサーが小さいほど実際の焦点距離を短くしなければならないためです。換算 50mm にするには、1/1.3型では実際の焦点距離は約 13.9 mm で済みます。ボケの大きさは焦点距離に強く左右されるので、F 値が同じでも、焦点距離の短いスマートフォンでは背景がぼけにくくなります。

F 値は「レンズがどれだけ光を集めるか」(写真の明るさ)を表す数で、明るさの点では F1.8 はどのセンサーでも F1.8 です。ボケの大きさを比べるときだけ、クロップ係数を掛けた値で考えます。

スマホで背景をぼかしたいとき

計算から分かるのは、次のことです。

  • 望遠側を使い、近づく:換算 24mm より 50mm のほうが、同じ F 値でもボケは大きくなります。人物を撮るなら、2 倍や 3 倍のズームで少し離れて撮るほうが、背景はぼけます(ズームが光学ズームの場合)。
  • 背景を遠ざける:人の 3 m 後ろの壁より、遠くの景色のほうが大きくぼけます。
  • ソフトウェアのぼかし:スマートフォンの「ポートレート」などの撮影モードは、レンズのボケではなく、撮ったあとに背景を見分けて画像処理でぼかしています。この記事の計算は、その処理を含まない、レンズだけで生まれるボケです。

自分のカメラやレンズで確かめたいときは、FOV Studio にセンサーの大きさ・焦点距離・F 値・距離を入れると、ピントが合って見える範囲(被写界深度)を計算できます。背景のボケの大きさの目安は「ポートレートの被写界深度とボケ」で説明しています。被写界深度の考え方は「被写界深度を深く・浅くする方法と計算式」、換算の考え方は「35mm判換算とクロップ係数の仕組み」でくわしく説明しています。

出典

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