輸送密度ワースト20の路線に共通すること

鉄道の路線がどれくらい使われているかを表す数字に、輸送密度があります。ある路線の 1 km ごとに、1 日あたり平均何人の乗客が通ったかを表す値で、「平均通過人員」とも呼ばれます。路線の長さが違っても比べられるので、ローカル線の存廃や経営の議論でよく使われます。

この記事では、Rail Density Explorer に収録している全国 676 の線区・区間(2023年度(令和5年度))を輸送密度の低い順に並べ、下位 20 の路線に共通する点を調べました。JR 各社が区間ごとに公表している線は区間を 1 件として数えています。

ワースト20の一覧

輸送密度がいちばん低かったのは、西日本旅客鉄道の芸備線(東城~備後落合)で、1 日あたり 20 人でした。下位 20 件目は 150 人/日です。

輸送密度の低い線区・区間(2023年度(令和5年度)、全国 676 線区・区間のうち)
低い順線区・区間事業者区分営業キロ輸送密度(人/日)前年度比
1芸備線(東城~備後落合)西日本旅客鉄道JR25.820+0.0%
2陸羽東線(鳴子温泉~最上)東日本旅客鉄道JR20.751+15.9%
3花輪線(荒屋新町~鹿角花輪)東日本旅客鉄道JR32.162+12.7%
4久留里線(久留里~上総亀山)東日本旅客鉄道JR9.664+18.5%
5山田線(上米内~宮古)東日本旅客鉄道JR92.271+10.9%
6木次線(出雲横田~備後落合)西日本旅客鉄道JR29.672+33.3%
7飯山線(戸狩野沢温泉~津南)東日本旅客鉄道JR30.484+10.5%
8芸備線(備後落合~備後庄原)西日本旅客鉄道JR23.986+14.7%
9芸備線(備中神代~東城)西日本旅客鉄道JR18.888-1.1%
10西信貴鋼索線近畿日本鉄道大手民鉄1.395—
11北上線(ほっとゆだ~横手)東日本旅客鉄道JR25.9101+12.2%
12磐越西線(野沢~津川)東日本旅客鉄道JR30.8102+45.7%
13只見線(会津川口~只見)東日本旅客鉄道JR27.6103+30.4%
14大糸線(南小谷~糸魚川)西日本旅客鉄道JR35.3110+1.9%
15阿佐海岸鉄道 全線阿佐海岸鉄道中小民鉄10.0111—
15姫新線(中国勝山~新見)西日本旅客鉄道JR34.3111-15.9%
17只見線(只見~小出)東日本旅客鉄道JR46.8121+13.1%
18因美線(東津山~智頭)西日本旅客鉄道JR38.9134+3.1%
19水郡線(常陸大子~磐城塙)東日本旅客鉄道JR25.7147+2.8%
20予土線(北宇和島~若井)四国旅客鉄道JR76.3150—
芸備線(東城~備後落合)20人/日陸羽東線(鳴子温泉~最上)51人/日花輪線(荒屋新町~鹿角花輪)62人/日久留里線(久留里~上総亀山)64人/日山田線(上米内~宮古)71人/日木次線(出雲横田~備後落合)72人/日飯山線(戸狩野沢温泉~津南)84人/日芸備線(備後落合~備後庄原)86人/日芸備線(備中神代~東城)88人/日西信貴鋼索線95人/日北上線(ほっとゆだ~横手)101人/日磐越西線(野沢~津川)102人/日只見線(会津川口~只見)103人/日大糸線(南小谷~糸魚川)110人/日阿佐海岸鉄道 全線111人/日姫新線(中国勝山~新見)111人/日只見線(只見~小出)121人/日因美線(東津山~智頭)134人/日水郡線(常陸大子~磐城塙)147人/日予土線(北宇和島~若井)150人/日
輸送密度(人/日)の低い線区・区間

比べるための目安として、国土交通省の検討会の提言(2022 年 7 月)は、JR のローカル線区について、平常時の輸送密度が 1,000 人/日を下回っていることを、国が関わって鉄道の在り方を話し合う協議会を設ける目安の一つにしています(1,000 人は、旧国鉄のバス転換の基準 4,000 人の 4 分の 1 の水準とされています)。ワースト 20 は、どれもその 10 分の 1 前後かそれ以下の水準です。

共通点1: ほとんどが JR の「区間」

20 件のうち 18 件が JR の線区・区間で、そのうち 16 件は路線の一部の区間です。JR 以外は 2 件でした。

事業者別の件数
事業者件数
東日本旅客鉄道10
西日本旅客鉄道7
四国旅客鉄道1
近畿日本鉄道1
阿佐海岸鉄道1

JR の路線は、県庁所在地や大きな駅に近い区間と、山あいの区間とで、利用者の数が大きく違います。路線全体で見ると目立たなくても、区間ごとに分けると、ほとんど人が乗っていない部分が浮かび上がります。JR 東海を除く JR 旅客会社は、線区の一部を区間に分けて輸送密度を公表しているため、ワーストの上位に区間が並びやすくなっています。

逆にいえば、私鉄や第三セクター鉄道は会社全体や路線全体の値しか公表されていないことが多く、同じくらい利用の少ない区間があっても、このランキングには現れにくいという点に注意が必要です。

共通点2: 県境や山あいの、短い区間

区間の営業キロは、中央値が 28.6 km で、長いものでも 92.2 km です。20 件を合わせると 636.0 km になります。いちばん短いのは近畿日本鉄道の西信貴鋼索線(ケーブルカー、1.3 km)です。

一覧の区間名を地図で見ると、芸備線・木次線の「備後落合」、陸羽東線の「最上」、只見線の「只見」のように、県境に近い駅や、山間部の駅を端に持つ区間が多くあります。沿線に住む人が少なく、通勤・通学で使われる区間が両端の町に近い部分に限られるため、中間の区間の利用が極端に少なくなると考えられます。

共通点3: 前年度より増えた区間が多い

前年度(2022年度)の値と比べられる 17 件のうち、14 件は前年度より輸送密度が増えていました。新型コロナウイルス感染症の流行で減った利用が戻りつつあることや、観光で乗りに来る人の影響が考えられますが、元の値が小さいため、数人の違いでも大きな割合になります。前年度比は「増えたか減ったか」の目安として読むのが適当です。

順位から外した区間: 代行輸送

2023 年度に、列車の代わりにバスなどで代行輸送をしていた区間は、列車が通常どおり走っている区間と同じ条件で比べられないため、この一覧の順位から外しています(Rail Density Explorer の順位と同じ扱いです)。外した 7 区間を含めると、全国の線区・区間は 683 になります。

バス等による代行輸送があったため、順位から外した線区・区間(2023年度(令和5年度))
線区・区間事業者営業キロ輸送密度(人/日)注記
津軽線(中小国~三厩)東日本旅客鉄道24.4612022年8月の豪雨で被災して以降、バス等による代行輸送を行っています。2023年度の値は代行輸送の期間のものです。
根室線(富良野~新得)北海道旅客鉄道81.780バス代行を継続的に実施している区間があるため、JR北海道は全線区合計の輸送密度の算出にこの線区の実績を含めていません。
米坂線(小国~坂町)東日本旅客鉄道32.4862022年8月の豪雨で被災して以降、バス等による代行輸送を行っています。2023年度の値は代行輸送の期間のものです。
陸羽西線(新庄~余目)東日本旅客鉄道43.0129国道47号の高屋トンネルの工事のため、2022年5月からバスによる代行輸送を行っています。2023年度の値は代行輸送の期間のものです。代行バスの費用は国から受け取っていますが、運輸収入には計上していません。
米坂線(今泉~小国)東日本旅客鉄道35.31362022年8月の豪雨で被災して以降、バス等による代行輸送を行っています。2023年度の値は代行輸送の期間のものです。
山陰線(長門市~小串、長門市~仙崎)西日本旅客鉄道52.82052023年6月30日からの大雨で長門市~小串が被災し、2023年9月19日の発表の時点で運転を見合わせて代行バスを運転しています。この線区の値には長門市~仙崎(仙崎支線)も含まれますが、JR西日本の発表で運転を見合わせた区間は長門市~小串です。JR西日本は2023年度の値を、運転を見合わせた期間も含めて算出しています(JR西日本「輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示」の注記)。
美祢線(厚狭~長門市)西日本旅客鉄道46.03002023年6月30日からの大雨で被災し、2023年9月19日の発表の時点で運転を見合わせて代行バスを運転しています。JR西日本は2023年度の値を、運転を見合わせた期間も含めて算出しています(JR西日本「輸送密度2,000人/日未満の線区別経営状況に関する情報開示」の注記)。

JR 東日本の資料は、津軽線(中小国~三厩)と米坂線(今泉~小国、小国~坂町)について 2022 年 8 月の豪雨で被災して以降、陸羽西線(新庄~余目)について国道の工事のため 2022 年 5 月から、バスなどによる代行輸送を行っていると注記しています。根室線(富良野~新得)についても、JR 北海道はバス代行を続けている区間があると注記しています。また、JR 西日本は、美祢線(厚狭~長門市)と山陰線(長門市~小串)が 2023 年 6 月 30 日からの大雨で被災し、運転を見合わせて代行バスを運転していると発表しています。このうち、津軽線・根室線・米坂線(2 区間)・陸羽西線の 5 区間は、輸送密度の値だけを見るとワースト 20 に入る水準です。

共通点4: 第4種踏切が多い線

踏切の数は、統計(鉄道統計年報)では線全体の値しかないため、ワースト 20 の区間を含む 17 の線全体で集計しました。

これらの線では、踏切のうち遮断機も警報機もない第4種踏切の割合が 12.1% で、全国の踏切全体の割合(7.2%)より高くなっています。とくに芸備線と木次線は、踏切の 5 分の 1 以上が第4種です。第4種踏切は利用者の少ない道路と交わる場所に多く、沿線の人の少なさが設備にも表れているといえます。第4種踏切については「遮断機も警報機もない第4種踏切はどこに残っているか」でくわしく調べています。

数字を読むときの注意

  • 輸送密度は「1 km あたりの平均」です。同じ区間の中でも、駅に近い部分と遠い部分で利用は違います。
  • JR の区間の値は各社の公表資料、それ以外は国土交通省の鉄道統計年報の値です。集計の方法が少し違うため、厳密に同じ物差しとはいえません。
  • 輸送密度が低いことは、その路線が不要だという意味ではありません。通学や通院の足として欠かせない人もいますし、観光や災害時の迂回路としての役割もあります。

各線区のくわしい数字(輸送人員・営業係数・設備)は、Rail Density Explorer の各線区のページと「輸送密度ワースト100」で見られます。

出典

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