遮断機も警報機もない第4種踏切はどこに残っているか
公開日 ・鉄道のデータ
田舎道を歩いていると、線路を渡る場所に「とまれみよ」の標識だけが立っていて、遮断機も警報機もない踏切に出会うことがあります。これが第4種踏切です。列車が来るかどうかは、渡る人が自分の目と耳で確かめるしかありません。
この記事では、国土交通省の鉄道統計年報(2023年度(令和5年度))にある踏切の種別ごとの数から、第4種踏切がどこに多く残っているかを調べました。
踏切の種類
踏切は、設備によって次のように分けられています。
- 第1種踏切: 遮断機と警報機がある踏切
- 第3種踏切: 警報機はあるが、遮断機がない踏切
- 第4種踏切: 遮断機も警報機もない踏切
第2種踏切は、国土交通省によると現在は設置されていません。
全国の踏切は 32,671 か所で、そのうち第1種が 29,713 か所(90.9%)、第3種が 596 か所(1.8%)、第4種が 2,362 か所(7.2%)でした。踏切のおよそ 14 に 1 つは、遮断機も警報機もないことになります。
JR と中小民鉄で半分ずつ
| 区分 | 第4種がある事業者 | 踏切の数 | うち第4種 | 第4種の割合 | 全国の第4種に占める割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| JR | 7 | 19,729 | 1,182 | 6.0% | 50.0% |
| 大手民鉄 | 2 | 5,513 | 2 | 0.0% | 0.1% |
| 中小民鉄 | 76 | 7,083 | 1,150 | 16.2% | 48.7% |
| 公営 | 5 | 346 | 28 | 8.1% | 1.2% |
第4種踏切の数は、JR 各社(貨物の日本貨物鉄道を含む)が 1,182 か所で全国の 50.0% を占め、残りのほとんどが中小民鉄です。大都市の大手民鉄には、第4種踏切はほとんど残っていません。
ただし、踏切に占める割合で見ると様子が変わります。JR は踏切の数そのものが多いため割合は高くありませんが、中小民鉄は踏切のおよそ 6 つに 1 つが第4種です。地方の中小民鉄の路線は、農道や生活道路と交わる場所が多く、交通量の少ない踏切が多いためと考えられます。
地域ごとの違い
JR 各社は全国にまたがるため地域別に分けられないので、JR を除いた事業者を運輸局(国土交通省の地方の窓口)ごとに集計しました。
| 運輸局 | 踏切の数 | うち第4種 | 第4種の割合 |
|---|---|---|---|
| 関東運輸局 | 3,727 | 350 | 9.4% |
| 中部運輸局 | 2,576 | 216 | 8.4% |
| 北陸信越運輸局 | 961 | 131 | 13.6% |
| 九州運輸局 | 1,179 | 131 | 11.1% |
| 東北運輸局 | 657 | 127 | 19.3% |
| 近畿運輸局 | 2,947 | 102 | 3.5% |
| 四国運輸局 | 585 | 72 | 12.3% |
| 中国運輸局 | 263 | 48 | 18.3% |
| 北海道運輸局 | 47 | 3 | 6.4% |
数では関東・中部が多くなりますが、割合では東北・中国が高く、踏切のおよそ 5 つに 1 つが第4種です。近畿は踏切の数が多いわりに第4種の割合が低く、都市部の路線が多いことが表れています。
第4種踏切の多い事業者
| 事業者 | 区分 | 踏切の数 | うち第4種 | 第4種の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 西日本旅客鉄道 | JR | 5,653 | 383 | 6.8% |
| 東日本旅客鉄道 | JR | 6,598 | 271 | 4.1% |
| 九州旅客鉄道 | JR | 2,715 | 211 | 7.8% |
| 四国旅客鉄道 | JR | 1,319 | 102 | 7.7% |
| 東海旅客鉄道 | JR | 1,862 | 86 | 4.6% |
| 秩父鉄道 | 中小民鉄 | 292 | 84 | 28.8% |
| 北海道旅客鉄道 | JR | 1,408 | 71 | 5.0% |
| 日本貨物鉄道 | JR | 174 | 58 | 33.3% |
| 富山地方鉄道 | 中小民鉄 | 249 | 54 | 21.7% |
| 小湊鉄道 | 中小民鉄 | 98 | 49 | 50.0% |
| 上信電鉄 | 中小民鉄 | 134 | 45 | 33.6% |
| 一畑電車 | 中小民鉄 | 141 | 41 | 29.1% |
| 島原鉄道 | 中小民鉄 | 180 | 39 | 21.7% |
| 関東鉄道 | 中小民鉄 | 195 | 37 | 19.0% |
| 神戸電鉄 | 中小民鉄 | 165 | 36 | 21.8% |
数がいちばん多いのは西日本旅客鉄道(383 か所)です。上位 5 社で全国の第4種踏切の 44.6% を占めます。
割合で見ると、踏切の半分ほどが第4種という事業者もあります。
| 事業者 | 区分 | 踏切の数 | うち第4種 | 第4種の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 名古屋臨海鉄道 | 中小民鉄 | 38 | 20 | 52.6% |
| 伊豆急行 | 中小民鉄 | 44 | 23 | 52.3% |
| 小湊鉄道 | 中小民鉄 | 98 | 49 | 50.0% |
| 明知鉄道 | 中小民鉄 | 50 | 25 | 50.0% |
| 箱根登山鉄道 | 中小民鉄 | 32 | 15 | 46.9% |
| 秋田内陸縦貫鉄道 | 中小民鉄 | 65 | 26 | 40.0% |
| 津軽鉄道 | 中小民鉄 | 41 | 16 | 39.0% |
| 福島交通 | 中小民鉄 | 70 | 25 | 35.7% |
| 土佐くろしお鉄道 | 中小民鉄 | 32 | 11 | 34.4% |
| 上信電鉄 | 中小民鉄 | 134 | 45 | 33.6% |
この表には、観光路線として知られる鉄道や、工場への貨物を運ぶ臨海鉄道も入っています。貨物の専用の線路は、人や車がほとんど通らない場所を走るため、遮断機を付けない踏切が多くなりやすいと考えられます。
第4種踏切の多い線区
線区ごとの値(国土交通省の統計で線区別に分かれている線)で見ると、第4種踏切がいちばん多いのは秩父鉄道の秩父鉄道 全線で、84 か所でした。第4種踏切のある線区は、統計で線区別に分かれているものだけで 177 あります。
| 線区 | 事業者 | 営業キロ | 踏切の数 | うち第4種 | 第4種の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 秩父鉄道 全線 | 秩父鉄道 | 71.7 | 292 | 84 | 28.8% |
| 芸備線(備中神代~広島) | 西日本旅客鉄道 | 159.1 | 283 | 59 | 20.8% |
| 富山地方鉄道 鉄道線 | 富山地方鉄道 | — | 248 | 53 | 21.4% |
| 山陽線(神戸~下関 など) | 西日本旅客鉄道 | 530.8 | 846 | 53 | 6.3% |
| 予讃線(高松~宇和島) | 四国旅客鉄道 | 327.0 | 610 | 52 | 8.5% |
| 小湊鉄道 全線 | 小湊鉄道 | 39.1 | 98 | 49 | 50.0% |
| 上信電鉄 全線 | 上信電鉄 | 33.7 | 134 | 45 | 33.6% |
| 一畑電車 全線 | 一畑電車 | 42.2 | 141 | 41 | 29.1% |
| 島原鉄道 全線 | 島原鉄道 | 43.2 | 180 | 39 | 21.7% |
| 山陰線(京都~幡生 など) | 西日本旅客鉄道 | 676.0 | 751 | 39 | 5.2% |
| 水郡線(水戸~安積永盛、上菅谷~常陸太田) | 東日本旅客鉄道 | 147.0 | 244 | 37 | 15.2% |
| 日南線(南宮崎~志布志) | 九州旅客鉄道 | 88.9 | 143 | 36 | 25.2% |
| 長野電鉄 全線 | 長野電鉄 | 33.2 | 123 | 36 | 29.3% |
| 日田彦山線(城野~夜明) | 九州旅客鉄道 | 68.7 | 125 | 35 | 28.0% |
| 高松琴平電気鉄道 全線 | 高松琴平電気鉄道 | 60.0 | 308 | 34 | 11.0% |
長い幹線(山陽線・山陰線など)は踏切の数そのものが多いため上位に入りますが、割合は低めです。割合が高いのは、地方の短い私鉄の路線と、JR のローカル線です。輸送密度が低い線区ほど第4種踏切が多い傾向は、「輸送密度ワースト20の路線に共通すること」でも見られました。
なぜ第4種踏切は減りにくいのか
第4種踏切は、事故が起きやすい踏切です。総務省が 2021 年 11 月に国土交通省へ出した勧告によると、令和元年度の踏切事故の件数は、第4種踏切 100 か所あたり 1.02 件で、遮断機のある第1種踏切(同 0.59 件)の 2 倍近くでした。第4種踏切は今の基準では新しく作れず、過渡的に認められているもので、解消に取り組むべきものとされています。
解消の方法は、遮断機や警報機を付けて第1種にするか、近くの踏切とまとめて廃止するかです。しかし、同じ勧告は、鉄道事業者と地元の関係者との話し合いが十分に進まず、合意を得るのに苦労している実態を指摘しています。踏切を廃止すると、地元の人が遠回りしなければならなくなるからです。勧告は、国土交通省に対して、鉄道事業者・道路の管理者・自治体などが集まる協議会を活用して、地域での話し合いを促すことなどを求めています。
なお、総務省の勧告では第4種踏切は全国に約 2,600 か所とされています。この記事で数えた 2,362 か所(2023年度(令和5年度))とは、集計の年度が違います。
第4種踏切を渡るときは、止まって左右を見て、列車が来ないことを確かめてから渡りましょう。列車は急には止まれません。
各事業者・各線区の踏切の数は、Rail Density Explorer の各ページの「設備」の欄と、「第4種踏切の多い線区」のランキングで見られます。
出典
- 国土交通省「踏切対策の推進 1.踏切道の現状」
- 総務省「第4種踏切道の安全確保に関する実態調査の結果に基づく勧告(概要)」(令和3年11月30日)
- 国土交通省 鉄道局「鉄道統計年報」(2023年度、踏切道の種別ごとの箇所数)
- Rail Density Explorer「第4種踏切の多い線区」ランキング
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