ピースサインの写真から指紋は読み取れるか。必要な細かさと距離を計算した
公開日 ・写真とプライバシー
ピースサインをした写真から、指紋が読み取られてしまうことがある、という話を聞いたことはないでしょうか。最近のスマートフォンは画素数が多く、拡大すると指先のしわまで写っていることがあります。
では、どのくらい近くで撮ると、指紋が読み取れるほどの細かさになるのでしょうか。画素の細かさから計算してみます。
指紋の画像に使われる細かさ
指紋の画像は、警察などの間でやり取りするために、決まった細かさで記録されてきました。米国国立標準技術研究所(NIST)の資料では、その細かさは 500 ppi(1 インチあたり 500 画素、1 mm あたり約 19.7 画素)とされています。
この記事では、500 ppi を「指紋の画像として使える細かさ」の目安にしました。比べるために、その半分の 250 ppi も計算しています。
何 cm まで近づくと、その細かさになるか
写真の中で、指先の 1 mm が何画素で写るかは、写る範囲の広さ(画角と距離)と画素数で決まります。スマートフォンのカメラで計算しました。
| カメラ | 500 ppi(19.7 画素/mm) | 250 ppi(9.8 画素/mm) |
|---|---|---|
| 1 倍(換算 24mm)・1,200万画素 | 14 cm | 28 cm |
| 1 倍(換算 24mm)・4,800万画素 | 28 cm | 56 cm |
| 2 倍(換算 48mm)・1,200万画素 | 28 cm | 56 cm |
| 5 倍(換算 120mm)・1,200万画素 | 70 cm | 1.4 m |
ふつうの 1 倍のカメラ・1,200万画素で、500 ppi の細かさになるのは、指先から約 14 cm 以内です。腕を伸ばした自撮りや、少し離れた人に撮ってもらう写真では、500 ppi には届きません。
一方、望遠で撮ると話が変わります。5 倍の望遠(換算 120mm)なら、約 70 cm 離れていても 500 ppi になり、250 ppi なら約 1.4 m まで届きます。
| カメラ | 30 cm | 50 cm | 1.0 m | 2.0 m |
|---|---|---|---|---|
| 1 倍(換算 24mm)・1,200万画素 | 9.2 | 5.5 | 2.8 | 1.4 |
| 1 倍(換算 24mm)・4,800万画素 | 18.5 | 11.1 | 5.5 | 2.8 |
| 2 倍(換算 48mm)・1,200万画素 | 18.5 | 11.1 | 5.5 | 2.8 |
| 5 倍(換算 120mm)・1,200万画素 | 46.2 | 27.7 | 13.9 | 6.9 |
1 m 離れて撮った場合、1 倍のカメラでは指先 1 mm あたり約 2.8 画素ですが、5 倍の望遠では約 13.9 画素になります。
計算どおりには読み取れない理由
この計算は、画素の細かさだけを見たものです。実際には、次のような理由で、細かさが足りていても指紋が写っているとは限りません。
- ピントとブレ:指先にピントが合っていない、手や体が動いてブレている、といった写真では、細かいしわは写りません。
- 画像の圧縮:SNS に投稿すると、写真は縮小され、強く圧縮されることがあります。
- 指の向きと光:指の腹がカメラに正面から向いていて、しわの凹凸が見えるような光が当たっている必要があります。
ただし、写真のファイルは投稿したあとも残り続けます。拡大して加工されることもあるので、指先を大きく写した写真は、念のため気をつけるに越したことはありません。
気をつけたいこと
- 指先を大きく写さない:ピースサインなどで指の腹をカメラに向けるときは、手をカメラから離す。特に、望遠で撮られる写真や、手のアップの写真に注意する。
- 投稿前に隠す:気になる写真は、指先をぼかしやモザイクで隠してから投稿する。モザイクの粗さについては「モザイクの粗さで、文字はどこまで読めてしまうか」で試しています。
- 元の大きさで投稿しない:縮小してから投稿すれば、1 mm あたりの画素数は減ります。
Web Mask Studio では、写真をサーバーに送らずに、ブラウザの中で一部をぼかしたり塗りつぶしたりできます。画素の細かさの考え方は、FOV Studio の「空間分解能(GSD)と必要画素数の考え方」で説明しています。
出典
- NIST Special Publication 500-289「Compression Guidance for 1000 ppi Friction Ridge Imagery」(500 ppi = 19.7 画素/mm)
- SWGFAST「Standard for Friction Ridge Digital Imaging」(NIST が公開)
- FOV Studio「空間分解能(GSD)と必要画素数の考え方」
関連するツール
画角・被写界深度 計算ツール
FOV Studio 焦点距離・センサー・F値・距離から、画角・撮影範囲・被写界深度・35mm換算を計算。 PRIVACY / IMAGE画像モザイク・黒塗りツール
Web Mask Studio 写真の顔を自動検出してモザイク・黒塗り。ナンバーや文字も手動で隠せ、位置情報(EXIF)も消去。画像は送信しません。ほかの記事
- 写真の位置情報は、桁数しだいで何 m まで分かるか
写真に記録される緯度・経度は、小数点以下の桁数で場所の細かさが決まります。小数点以下 3 桁なら約 100 m、4 桁なら約 10 m。地球の大きさ(GRS80 楕円体)から、桁数ごとに何 m まで分かるかを計算しました。
・写真とプライバシー - 写真の影から、撮った時刻と季節はどこまで分かるか
写真から撮影日時の情報(EXIF)を消しても、写り込んだ影から時刻や季節が分かることがあります。東京付近で、季節と時刻ごとに影の長さと向きがどう変わるかを、NOAA の太陽の位置の式で計算しました。
・写真とプライバシー - モザイクの粗さで、文字はどこまで読めてしまうか
架空の名前・住所・電話番号を書いた画像に、Web Mask Studio と同じ計算で粗さを変えたモザイクとぼかしをかけ、どこまで読めるかを比べました。縮小して見ると、原寸では読めないモザイクが読めてしまうことがありました。
・写真とプライバシー