営業係数が高い鉄道会社はどこか

鉄道会社のもうけ具合を表す数字に、営業係数があります。100 円の収入を得るのに、いくらの費用がかかったかを表す値で、100 を超えると赤字です。営業係数 300 なら、100 円稼ぐのに 300 円かかっていることになります。

「大手私鉄の営業係数を比べる」では、都市部の大手私鉄がどれも黒字だったことを紹介しました。この記事では、全国の鉄道事業者に広げて、営業係数が高い(赤字の割合が大きい)会社を調べます。

調べ方

国土交通省の鉄道統計年報(2023年度(令和5年度))にある、鉄道事業(鉄軌道業)だけの営業係数を使いました。不動産やバスなど、鉄道以外の事業は含みません。線路や設備を持つだけで列車を走らせていない会社と、年度の途中で開業した会社は、ほかの会社と同じ条件で比べられないため除き、175 社を比べました。

営業係数が高い 20 社

鉄軌道業の営業係数が高い事業者(2023年度(令和5年度)、営業係数の高い順)
順位事業者区分旅客営業キロ営業収益(億円)営業損益(億円)営業係数
1いすみ鉄道中小民鉄26.80.7-3.6654
2阿佐海岸鉄道中小民鉄10.00.1-0.7578
3ラクテンチ中小民鉄0.30.1-0.3535
4紀州鉄道中小民鉄2.70.1-0.4458
5芝山鉄道中小民鉄2.21.1-3.2403
6秋田内陸縦貫鉄道中小民鉄94.21.3-3.5375
7スカイレールサービス中小民鉄1.30.7-1.7352
8くま川鉄道中小民鉄24.80.7-1.7340
9東海交通事業中小民鉄11.21.0-2.1316
10わたらせ渓谷鐵道中小民鉄44.11.8-3.5292
11錦川鉄道中小民鉄32.70.7-1.2289
12のと鉄道中小民鉄33.11.4-2.7289
13由利高原鉄道中小民鉄23.00.6-1.2289
14三陸鉄道中小民鉄163.03.9-7.0281
15北越急行中小民鉄59.54.8-8.2272
16平成筑豊鉄道中小民鉄51.33.4-5.2252
17明知鉄道中小民鉄25.10.9-1.3248
18長良川鉄道中小民鉄72.13.1-3.8223
19福井鉄道中小民鉄21.43.5-4.2220
20野岩鉄道中小民鉄30.72.3-2.7215
いすみ鉄道654阿佐海岸鉄道578ラクテンチ535紀州鉄道458芝山鉄道403秋田内陸縦貫鉄道375スカイレールサービス352くま川鉄道340東海交通事業316わたらせ渓谷鐵道292錦川鉄道289のと鉄道289由利高原鉄道289三陸鉄道281北越急行272平成筑豊鉄道252明知鉄道248長良川鉄道223福井鉄道220野岩鉄道215100
営業係数が高い事業者(上位 20)

営業係数がいちばん高かったのはいすみ鉄道で、654 でした。100 円の収入を得るのに、約 654 円の費用がかかっている計算です。上位 20 社はすべて営業係数が 215 以上で、20 社すべてが中小民鉄でした。

区分ごとに見る

事業者の区分ごとの営業係数
区分事業者の数100 を超える(赤字)割合中央値
JR6233%91
大手民鉄1600%88
中小民鉄1429567%109
公営11655%101

比べた 175 社のうち 103 社(59%)は、営業係数が 100 を超える赤字でした。全体の中央値は 106 です。

区分ごとに見ると違いがはっきりします。大手民鉄は 1 社も赤字ではありませんでしたが、中小民鉄は 3 社に 2 社が赤字です。地方の第三セクター鉄道や中小の私鉄の多くは、運賃の収入だけでは列車の運行や線路の維持にかかる費用をまかなえていません。

上位の会社に共通すること

上位 20 社の顔ぶれから、いくつかの傾向が読み取れます。

1. 地方のローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道 いすみ鉄道・秋田内陸縦貫鉄道・わたらせ渓谷鐵道・三陸鉄道など、上位の多くは、国鉄や JR のローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道です。沿線の人口が少なく、もともと利用の少ない路線を、地元の自治体などが出資する会社が受け継いだ経緯があります。

2. 短い路線 上位 20 社のうち 11 社は、旅客営業キロが 30 km 未満です。路線が短くても、車両・駅・線路・信号を持ち、運転士や保守の人を置く必要があるため、収入の少なさに対して費用が大きくなりやすいと考えられます。

3. 観光や特別な役割の路線 上位には、遊園地の中のケーブルカー(ラクテンチ)や、住宅地と駅を結ぶ新交通システム(スカイレールサービス)、空港の近くの短い路線(芝山鉄道)なども入っています。こうした路線は、鉄道事業だけで利益を出すことよりも、観光や地域の足としての役割を担っていると考えられます。

営業係数を読むときの注意

  • 営業係数は鉄道事業だけの値です。会社全体の業績や、自治体からの補助金は含みません。
  • 減価償却費(設備への投資を年数に分けて計上した費用)を含む「償却後」の値です。新しい車両や設備を入れた年は、営業係数が上がります。
  • 赤字だから不要、ということではありません。通学や通院の足として、また観光の資源として、地域にとって欠かせない路線も多くあります。

各事業者の営業係数・収入・費用の内訳は、Rail Density Explorer の「営業係数ランキング」と各事業者のページで見られます。

出典

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