地下鉄の営業係数を比べる(東京メトロ・都営・大阪メトロと市営地下鉄)
公開日 ・鉄道のデータ
地下鉄は、建設に莫大な費用がかかる一方で、都市の中心部を走るため多くの乗客が利用します。では、地下鉄を運営する会社や自治体の鉄道事業は、黒字なのでしょうか、赤字なのでしょうか。
この記事では、国土交通省の鉄道統計年報(2023年度(令和5年度))から、地下鉄を運営する 10 事業者の営業係数を比べました。営業係数は、100 円の収入を得るのにかかった費用で、100 を超えると赤字です。
調べ方
統計の値は事業者ごとの鉄道事業(鉄軌道業)全体の値です。路面電車やニュートラムなど、地下鉄以外の路線も運営している事業者は、その分も含めた値になります(表の右の欄に書いています)。不動産やバスなど、鉄道以外の事業は含みません。
10 事業者の営業係数
| 事業者 | 通称 | 旅客営業キロ | 営業収益(億円) | 営業損益(億円) | 営業係数(償却後) | 営業係数(償却前) | 1kmあたり営業収益(百万円) | 地下鉄のほかに含むもの |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 大阪市高速電気軌道 | 大阪メトロ | 137.8 | 1,627.4 | 352.6 | 78.3 | 51.5 | 1,181 | ニュートラム(南港ポートタウン線)を含む |
| 東京地下鉄 | 東京メトロ | 195.0 | 3,523.2 | 616.6 | 82.5 | 62.6 | 1,807 | — |
| 福岡市 | 福岡市地下鉄 | 31.4 | 337.3 | 53.5 | 84.2 | 44.1 | 1,074 | — |
| 札幌市 | 札幌市営地下鉄 | 48.0 | 420.9 | 56.9 | 86.5 | 49.2 | 877 | 札幌市電(路面電車)を含む |
| 名古屋市 | 名古屋市営地下鉄 | 93.3 | 769.0 | 60.4 | 92.2 | 61.7 | 824 | — |
| 東京都 | 都営地下鉄 | 130.9 | 1,489.4 | 42.4 | 97.2 | 64.7 | 1,138 | 都電荒川線・日暮里・舎人ライナー・上野モノレール(休止中)を含む |
| 横浜市 | 横浜市営地下鉄 | 53.4 | 386.4 | 0.4 | 99.9 | 47.9 | 724 | — |
| 京都市 | 京都市営地下鉄 | 31.2 | 275.2 | -3.8 | 101.4 | 49.8 | 882 | — |
| 仙台市 | 仙台市地下鉄 | 28.7 | 168.7 | -36.1 | 121.4 | 65.0 | 588 | — |
| 神戸市 | 神戸市営地下鉄 | 38.1 | 203.1 | -49.1 | 124.2 | 63.2 | 533 | — |
営業係数がいちばん低いのは大阪メトロ(78.3)で、東京メトロ(82.5)が続きます。一方、京都市営地下鉄・仙台市地下鉄・神戸市営地下鉄の 3 事業者は 100 を超え、鉄道事業が赤字でした。いちばん高いのは神戸市営地下鉄(124.2)です。
黒字と赤字を分けるもの
1 km あたりの収入
表の「1 km あたり営業収益」を見ると、東京メトロ・大阪メトロ・都営地下鉄・福岡市地下鉄などは 1 km あたり 10 億円を超えるのに対し、仙台市・神戸市は 5〜6 億円ほどです。路線の長さに対して乗客が少ないと、トンネルや駅を維持する費用に対して収入が足りなくなります。
建設の費用の負担
地下鉄は、建設の費用が大きいため、開業してからも長い間、減価償却費(設備への投資を、使う年数に分けて計上した費用)が重くのしかかります。営業費に占める減価償却費の割合は、神戸市営地下鉄の 53.8% から東京メトロの 27.6% まで差がありました。
表の「償却前」の営業係数(減価償却費を除いて計算した値)を見ると、10 事業者とも 100 を大きく下回ります。つまり、列車を走らせる日々の費用は運賃でまかなえていて、赤字の事業者でも、その原因の多くは建設の費用の負担にあると考えられます。比較的新しい路線を持つ事業者ほど、この負担が大きくなりやすいといえます。
民営化と規模
大阪メトロは、2018 年 4 月に大阪市交通局から民営化された会社です。東京メトロとともに、大都市の中心部に長い路線網を持ち、1 日に多くの乗客が利用しています。路線網が大きいと、乗り換えの多い利用が増え、全体として乗客が集まりやすいという面もあると考えられます。
数字を読むときの注意
- 公営の地下鉄の多くは、建設のときに国や自治体の補助を受けています。補助の受け方によって、減価償却費の大きさが変わるため、事業者どうしを単純には比べられません。
- 営業係数は鉄道事業だけの値で、自治体の会計全体の収支や、借入金の利息は含みません。
- 2023 年度は、新型コロナウイルス感染症の流行で減った利用が戻りつつある年度です。
全国の事業者の営業係数は、Rail Density Explorer の「営業係数ランキング」で見られます。大手私鉄どうしの比較は「大手私鉄の営業係数を比べる」、赤字の大きい事業者は「営業係数が高い鉄道会社はどこか」にまとめています。
出典
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