コロナ前の利用に戻った鉄道路線・戻らない路線

新型コロナウイルス感染症の流行で、2020 年度の鉄道の利用は大きく減りました。その後、利用はどこまで戻ったのでしょうか。この記事では、路線ごとの利用の多さを表す輸送密度(路線の 1 km ごとに、1 日あたり平均何人の乗客が通ったか)を、流行の前の 2019 年度と 2023年度(令和5年度) で比べました。

調べ方

国土交通省の鉄道統計年報には、民鉄・公営などの鉄道の線区ごとに、輸送密度(平均通過人員)が載っています。2023年度(令和5年度)の値を 2019 年度の値で割った「2019 年度比」を、214 線区について計算しました。100% なら 2019 年度と同じ利用に戻ったことになります。

JR の線は、各社が 2019 年度の区間ごとの値をそろえて公表していないため含めていません。延伸や運休で 2 つの年度の区間の長さが違う線区と、運行日数が年によって大きく変わるケーブルカーも除いています。

戻った線区は約 1 割

2019年度比(2023年度(令和5年度)の輸送密度 ÷ 2019年度)ごとの線区の数
2019年度比線区の数
70% 未満2
70〜80%4
80〜90%89
90〜100%97
100% 以上(戻った)22
70% 未満270〜80%480〜90%8990〜100%97100% 以上(戻った)22
2019年度比ごとの線区の数

2019 年度の水準以上に戻ったのは 22 線区(10%)でした。一方で、186 線区(87%)は 2019 年度の 80〜100% の間にあり、真ん中の線区は 91% でした。多くの線区は、大きく落ち込んだ 2020 年度からは回復したものの、2019 年度の 9 割前後にとどまっています。80% を下回った線区は 6 線区だけでした。

戻った線区

2019年度比が高い線区(上位 15)
線区事業者区分2019年度(人/日)2023年度(人/日)2019年度比
富士山麓電気鉄道 全線富士山麓電気鉄道中小民鉄4,8986,317129%
由利高原鉄道 全線由利高原鉄道中小民鉄264327124%
紀州鉄道 全線紀州鉄道中小民鉄205239117%
成田空港線京成電鉄大手民鉄30,13334,926116%
銚子電気鉄道 全線銚子電気鉄道中小民鉄593683115%
山口線西武鉄道大手民鉄2,2932,586113%
ひたちなか海浜鉄道 全線ひたちなか海浜鉄道中小民鉄1,7731,929109%
横浜シーサイドライン 全線横浜シーサイドライン中小民鉄20,66022,423109%
東成田線京成電鉄大手民鉄1,7971,931107%
愛知高速交通 全線愛知高速交通中小民鉄14,14815,171107%
樽見鉄道 全線樽見鉄道中小民鉄598638107%
長良川鉄道 全線長良川鉄道中小民鉄364388107%
三の輪早稲田軌道線東京都公営10,05710,662106%
スカイレールサービス 全線スカイレールサービス中小民鉄1,4561,505103%
空港線京浜急行電鉄大手民鉄139,118143,094103%

いちばん高かったのは富士山麓電気鉄道 全線で、2019 年度の 129% でした。

上位には、成田空港線・東成田線(京成電鉄)や、京浜急行電鉄の空港線など、空港へ向かう線区が入っています。また、由利高原鉄道・紀州鉄道・銚子電気鉄道のように、2019 年度の輸送密度が 1 日数百人ほどの小さな鉄道も上位にあります。もともとの利用が少ない線区は、数十人の増加でも割合が大きく動きます。

戻らない線区

2019年度比が低い線区(下位 15、低い順)
線区事業者区分2019年度(人/日)2023年度(人/日)2019年度比
野岩鉄道 全線野岩鉄道中小民鉄54034864%
大鰐線弘南鉄道中小民鉄49833567%
和歌山電鐵 全線和歌山電鐵中小民鉄2,9302,16374%
北越急行 全線北越急行中小民鉄1,2931,01478%
信楽高原鐵道 全線信楽高原鐵道中小民鉄98677478%
東京モノレール 全線東京モノレール中小民鉄84,81767,48080%
明知鉄道 全線明知鉄道中小民鉄51741680%
妙高はねうまラインえちごトキめき鉄道中小民鉄2,5012,02381%
無軌条電車線立山黒部貫光中小民鉄2,8922,35381%
弘南線弘南鉄道中小民鉄2,2971,86981%
山万 全線山万中小民鉄1,09289082%
小泉線東武鉄道大手民鉄2,6982,22883%
北条鉄道 全線北条鉄道中小民鉄70057983%
三岐鉄道 全線三岐鉄道中小民鉄2,7852,30783%
井の頭線京王電鉄大手民鉄245,787203,98583%

いちばん低かったのは野岩鉄道 全線で、2019 年度の 64% でした。下位も、多くは中小民鉄の線区です。上位と下位の両方に小さな鉄道が多く入っており、利用の少ない線区ほど、戻り方の差が大きく出ています。

羽田空港へ向かう東京モノレールは、2019 年度の 1 日 8 万人台から 6 万人台に減り、下位に入っていました。同じ空港へ向かう線区でも、戻り方には違いがあります。

区分・利用の多さごとに見る

事業者の区分ごとの2019年度比
区分線区の数100% 以上の線区2019年度比の中央値
大手民鉄66689%
中小民鉄1261492%
公営22291%
2019年度の輸送密度の大きさごとの2019年度比
2019年度の輸送密度(人/日)線区の数100% 以上の線区2019年度比の中央値
1,000 人未満27693%
1,000〜1万人72690%
1万〜10万人72992%
10万人以上43188%

区分ごとの中央値に大きな差はありませんでした。利用の多さで分けると、2019 年度の輸送密度が 1 日 10 万人以上の線区は、中央値が 88% とほかよりやや低く、2019 年度の水準以上に戻ったのは 1 線区だけでした。都市の通勤路線で戻り方が小さめなのは、在宅勤務の広がりなどで通勤の利用が減ったことが考えられますが、この統計からは理由までは分かりません。

数字を読むときの注意

  • 2019 年度は 2019 年 4 月〜2020 年 3 月です。年度末の 2〜3 月は、感染症の影響が出始めた時期を含みます。
  • 輸送密度は、乗った人数と乗った距離から計算した平均の値です。定期券と定期券以外の利用の内訳や、増減の理由は分かりません。
  • もともとの利用が少ない線区は、わずかな人数の変化でも割合が大きく動きます。

各線区の 2012 年度からの輸送密度の推移は、Rail Density Explorer の各線区のページで見られます。

出典

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