12年続けて鉄道事業が赤字の会社はどこか

「営業係数が高い鉄道会社はどこか」では、2023 年度の 1 年分の数字から、鉄道事業の赤字の割合が大きい会社を調べました。では、その赤字は一時的なものなのでしょうか、それとも長く続いているのでしょうか。この記事では、2012〜2023 年度の 12 年分の数字を並べて調べました。

調べ方

国土交通省の鉄道統計年報の損益計算表にある、各社の鉄道事業(鉄軌道業)の営業損益を使いました。営業収益(運賃などの収入)から営業費(運行や線路の維持にかかった費用)を引いた値で、マイナスなら赤字です。不動産やバスなど鉄道以外の事業と、自治体などからの補助金は含みません。

線路や設備を持つだけで列車を走らせていない会社は除きました。会社の区分(JR・大手民鉄・中小民鉄・公営)は、Rail Density Explorer の 2023 年度の区分です。

2023 年度は 6 割の会社が赤字

2023 年度に統計に値のある 175 社のうち、鉄道事業が赤字だったのは 103 社(59%)でした。区分ごと・年度ごとの赤字の会社の数は次のとおりです。

鉄道事業(鉄軌道業)が赤字だった会社の数(赤字の会社/統計に値のある会社)
年度JR大手民鉄中小民鉄公営
2012年度3/60/1670/1253/11
2013年度3/60/1670/1302/11
2014年度3/60/1682/1362/11
2015年度3/60/1679/1393/11
2016年度2/60/1680/1394/11
2017年度2/60/1680/1394/11
2018年度2/60/1678/1404/11
2019年度2/60/1687/1404/11
2020年度6/616/16137/14111/11
2021年度6/610/16126/14211/11
2022年度2/62/16105/1429/11
2023年度2/60/1695/1426/11

2020 年度は、新型コロナウイルス感染症の流行で利用が大きく減り、大手民鉄も 16/16 社がすべて赤字になりました。その後、大手民鉄は回復し、2023 年度に赤字だったのは 0 社です。

中小民鉄では赤字の割合が増えている

2012年度56%2013年度53.8%2014年度60.3%2015年度56.8%2016年度57.6%2017年度57.6%2018年度55.7%2019年度62.1%2020年度97.2%2021年度88.7%2022年度73.9%2023年度66.9%50
中小民鉄のうち、鉄道事業が赤字だった会社の割合

中小民鉄では、赤字の会社の割合が 2012 年度の 56%(70/125 社)から、2019 年度は 62%(87/140 社)に増えていました。感染症の流行の前から、少しずつ赤字の会社が増えていたことになります。2023 年度は 67%(95/142 社)で、流行の前よりも高い割合のままです。

12 年間すべて赤字だった 56 社

2012〜2023 年度の 12 年間、一度も鉄道事業が黒字にならなかった会社は 56 社ありました(ケーブルカーだけの会社は、運行の日数や役割がほかの鉄道と違うため除いています)。

2012〜2023年度の12年間すべて鉄道事業が赤字だった会社(2023年度の営業係数の高い順)
事業者区分営業係数(2012年度)営業係数(2019年度)営業係数(2023年度)営業損益(2023年度、百万円)
1いすみ鉄道中小民鉄217372654-361
2阿佐海岸鉄道中小民鉄8461,358578-68
3紀州鉄道中小民鉄329613458-45
4芝山鉄道中小民鉄353399403-321
5秋田内陸縦貫鉄道中小民鉄247336375-346
6スカイレールサービス中小民鉄114249352-167
7くま川鉄道中小民鉄156182340-166
8東海交通事業中小民鉄326292316-213
9わたらせ渓谷鐵道中小民鉄157191292-353
10錦川鉄道中小民鉄159227289-125
11のと鉄道中小民鉄241283289-265
12三陸鉄道中小民鉄210197281-701
13平成筑豊鉄道中小民鉄175192252-519
14明知鉄道中小民鉄179212248-135
15長良川鉄道中小民鉄180200223-384
16福井鉄道中小民鉄149173220-421
17野岩鉄道中小民鉄182175215-269
18会津鉄道中小民鉄178219215-358
19万葉線中小民鉄140136207-208
20樽見鉄道中小民鉄154159202-166
21和歌山電鐵中小民鉄135131202-283
22阿武隈急行中小民鉄112128201-512
23上毛電気鉄道中小民鉄144155200-324
24銚子電気鉄道中小民鉄196202194-106
25土佐くろしお鉄道中小民鉄126159192-673
26北条鉄道中小民鉄157166191-88
27井原鉄道中小民鉄165156187-270
28弘南鉄道中小民鉄102117183-227
29真岡鐵道中小民鉄142175183-225
30山形鉄道中小民鉄144151182-116
31北海道旅客鉄道JR143169177-60,604
32天竜浜名湖鉄道中小民鉄146156169-311
33函館市公営117146163-559
34えちぜん鉄道中小民鉄129132161-515
35肥薩おれんじ鉄道中小民鉄123143157-893
36四国旅客鉄道JR137152155-13,988
37岳南電車中小民鉄152140154-85
38島原鉄道中小民鉄120143145-209
39山万中小民鉄109148144-90
40伊賀鉄道中小民鉄210128144-125
41北陸鉄道中小民鉄120120141-216
42上信電鉄中小民鉄109114137-217
43三岐鉄道中小民鉄133122134-495
44流鉄中小民鉄121130134-104
45熊本市公営138116131-509
46松浦鉄道中小民鉄116113130-215
47津軽鉄道中小民鉄126122128-34
48近江鉄道中小民鉄124147125-254
49熊本電気鉄道中小民鉄104110125-113
50甘木鉄道中小民鉄112105119-45
51水島臨海鉄道中小民鉄107104118-109
52鹿島臨海鉄道中小民鉄111107110-95
53南阿蘇鉄道中小民鉄116266110-10
54阪堺電気軌道中小民鉄119106108-112
55筑豊電気鉄道中小民鉄104106107-59
56静岡鉄道中小民鉄110112106-91

56 社のうち 52 社は中小民鉄で、残りは北海道旅客鉄道(JR)・函館市(公営)・四国旅客鉄道(JR)・熊本市(公営)です。中小民鉄には、いすみ鉄道・秋田内陸縦貫鉄道・三陸鉄道など、国鉄のローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道が多く入っています。

2023 年度の営業係数がいちばん高かったのはいすみ鉄道で、654 でした。100 円の収入を得るのに、約 654 円の費用がかかっている計算です。56 社のうち 39 社は、2019 年度の営業係数が 2012 年度より高くなっていました。感染症の流行の前から、収支が悪くなっていた会社が多かったことになります。

数字を読むときの注意

  • 営業損益は鉄道事業だけの値です。会社全体の業績や、自治体からの補助金(営業外の収入)は含みません。
  • 統計に値のある会社だけを数えているため、年度によって会社の数が違います(開業や統計への掲載の始まりなど)。
  • 小さな会社は、わずかな金額の差で営業係数が大きく動きます。

各社の 12 年分の輸送人員・運賃収入・営業係数の推移は、Rail Density Explorer の各事業者のページで見られます。

出典

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