手元のスマホで撮った動画は可変フレームレートだったか

動画は、写真(コマ)を短い間隔で次々に表示して、動いているように見せています。1 秒間に何コマ表示するかがフレームレート(fps)で、30 fps なら 1 コマはおよそ 33 ミリ秒、60 fps なら約 16.7 ミリ秒です。

フレームの間隔がいつも同じ動画を固定フレームレート(CFR)、間隔が途中で変わる動画を可変フレームレート(VFR)といいます。スマートフォンのカメラは、処理が追いつかないときにコマを落とすことなどがあるため、可変フレームレートの動画になることがあると言われています。

可変フレームレートの動画は、「フレーム数 ÷ フレームレート」で時間を計算するとずれたり、動画編集ソフトで音と映像がずれたりする原因になります。では、手元のスマートフォンで撮った動画は、実際に可変フレームレートになっているのでしょうか。

調べ方

Video Inspector Pro は、動画ファイルに記録された全フレームの表示時刻を読み取り、フレームの間隔を調べます。この記事では、Video Inspector Pro と同じプログラム(動画ファイルを読むライブラリ Mediabunny と、ツールのフレームの時刻表の処理)で、手元のスマートフォンで撮った動画 3 本を調べました。

判定の基準も Video Inspector Pro と同じです。フレームの間隔の中央値(ふつうの 1 コマの長さ)から 5% 以上ずれた間隔が、全体の 0.5% を超え、かつ 2 回以上あるとき、「可変フレームレート」と判定します。

使った動画は次の 3 本です(2026 年 9 月に撮影)。

  • Google Pixel 9・4K・60 fps:屋外で新幹線を撮った動画(約 7 秒)
  • Android 15 の別のスマートフォン・フルHD・30 fps:体育館でライブを撮った動画(約 10 秒)
  • Google Pixel 9・4K・60 fps:室内で発表会の様子を撮った動画(約 67 秒)

結果

撮った動画のフレームの間隔(Video Inspector Pro と同じ方法で解析)
動画形式長さフレーム数平均フレームレート間隔の中央値最短〜最長の間隔中央値から5%以上ずれた間隔判定
Pixel 9・4K 60fps・屋外の新幹線(7秒)HEVC(H.265)・3840×21607.2 秒43160.00 fps16.7 ms16.4〜17.1 ms0 回(0.0%)固定
Android 端末・フルHD 30fps・体育館のライブ(10秒)H.264・1920×108010.1 秒30230.00 fps33.3 ms33.2〜33.4 ms0 回(0.0%)固定
Pixel 9・4K 60fps・室内の発表会(67秒)HEVC(H.265)・3840×216066.6 秒3,90458.63 fps16.7 ms15.6〜79.6 ms72 回(1.8%)可変

3 本のうち、可変フレームレートと判定されたのは 1 本でした。

屋外の新幹線(約 7 秒)と体育館のライブ(約 10 秒)の 2 本は、フレームの間隔がほぼ完全にそろっていました。屋外の新幹線の動画は、間隔が 16.4〜17.1 ミリ秒の範囲に収まり、中央値から 5% 以上ずれた間隔は 0 回です。1 コマ 16.7 ミリ秒に対して、ずれはせいぜい 0.4 ミリ秒ほどでした。

一方、同じ Pixel 9 で室内の発表会を撮った約 67 秒の動画は、可変フレームレートと判定されました。中央値から 5% 以上ずれた間隔が 72 回(全体の 1.8%)あり、平均のフレームレートは 60 fps ではなく 58.63 fps でした。

コマが抜けている

発表会の動画の間隔を、中央値に対する長さで分けてみました。

フレームの間隔の分布(間隔の中央値に対する長さで分けた回数)
動画0.95倍未満0.95〜1.05倍1.05〜1.5倍1.5〜2.5倍2.5倍以上
Pixel 9・4K 60fps・屋外の新幹線(7秒)0430000
Android 端末・フルHD 30fps・体育館のライブ(10秒)0301000
Pixel 9・4K 60fps・室内の発表会(67秒)13,831163619

ほとんどの間隔は 1 コマ分(中央値の 0.95〜1.05 倍)ですが、1.5 倍以上の長い間隔が 55 回ありました。いちばん長い間隔は 79.6 ミリ秒で、およそ 5 コマ分です。間隔が 2 倍なら 1 コマ、3 倍なら 2 コマが抜けていることになります。60 fps で撮ったつもりでも、ところどころでコマが記録されていなかったのです。

さらに、コマが抜けた 55 回のうち 53 回は、撮り始めから 15 秒の間に集中していました。撮り始めは、カメラが明るさやピントを合わせ直したり、手ぶれ補正が動き出したりする時間で、4K・60 fps のような負荷の大きい設定では、処理が追いつかずにコマを落としやすいのかもしれません。

分かったこと

  • 同じスマートフォン・同じ設定(Pixel 9・4K・60 fps)でも、屋外の新幹線は固定フレームレート、室内の発表会は可変フレームレートになりました。「この機種は固定」「この機種は可変」とは言い切れません。
  • 屋外は明るく、1 コマごとに十分な光が得られます。室内は屋外より暗いことが多く、60 fps では 1 コマに使える時間(約 16.7 ミリ秒)の中で明るさを確保するのが難しくなります。発表会の動画でコマが抜けたのは、暗さを補う処理や、明るさ・ピントの合わせ直しに、カメラの処理が追いつかなかったためかもしれません。
  • 体育館のライブは、別のスマートフォンのフルHD・30 fps で撮ったもので、固定フレームレートでした。30 fps は 1 コマに使える時間が 60 fps の 2 倍あり、データ量も 4K より少ないため、処理に余裕があったと考えられます。
  • 可変フレームレートになった動画は、フレームの間隔が少しずつ揺れているというより、ところどころでコマが抜けている状態でした。
  • コマが抜けた場所は、撮り始めの十数秒に集中していました。

可変フレームレートの動画を扱うときの注意

  • 時間を計るときは、フレーム数から計算せず、各フレームの表示時刻を使います。発表会の動画で「フレーム数 ÷ 60」で計算すると、3,904 コマ ÷ 60 = 約 65 秒となり、実際の長さ(約 66.6 秒)より 1 秒以上短くなります。Video Inspector Pro の区間の時間は、表示時刻から計算しています。
  • 動画編集ソフトに読み込むときは、ソフトによっては固定フレームレートに変換してから読み込むと、音と映像のずれを防げます。
  • 2 つの動画を並べて比べるときは、コマ数ではなく時刻で位置を合わせます。

フレームレートと時間の関係は「1コマは何ミリ秒?フレームレートと時間の関係」、可変フレームレートの仕組みは「可変フレームレート(VFR)とは?」で説明しています。

出典

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